2019年(平成31年)4月20日(土)23時35分頃…
 
 
『ぉんぎゃー!!!ぉんぎゃー!!!』
 
 
分娩室にて高らかに響き渡る産声。
私は…その頃…
 
遡ること39時間前。
 
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普段と変わらない朝を迎え、目覚めたばかりの寝惚けた顔を洗うため洗面所に向かおうと思ったその時。
 
『…来た…かも…』
 
明らかにいつもと違う表情を浮かべた家内がそこに居た。
 
私は急いで身支度をし、家内がこの日の為に準備していた「陣痛タクシー」なるサービスを使おうと問い合わせるも、慌てていたせいかタクシーを二台も呼んでしまう。
 
無事タクシーに乗車するも行先を伝えたところ、該当する病院が三件も出てくる始末。
 
…事前に受診している病院を登録していたはずなのだが。
 
仕方がなく家内の診察券を取り出し、住所を伝えて目的地に到着。
 
こういう時ほど、焦るのが男性。
 
家内は今までに味わったことがない激痛と戦いながらも、冷静に産科まで行き何事も無かったかのように陣痛室まで歩を進める。
 
かくいう私は心配だけが空回りし、出産時の力を蓄える為の食料などを買いに近くのコンビニまで小走りで向かったのだが、病室に戻り医師から一言…
 
「点滴で栄養補給するので飲食禁止です」
 
しかし、この出来事が後の布石になっていたとは…誰も予測していなかった。